コラム第17話 酸ヶ湯 薬師神社

  • 2013.06.18 Tuesday
  • 09:19


昔、横内村に左衛門四朗というマタギがいました。左衛門四朗は、いつも通り狩りに出ますが、その日は一匹の獲物もなく、知らず知らずのうちに、今まで行ったことのない山奥に入り込んでしまいました。前岳を通り過ぎ、田茂萢岳(たもやちだけ)に差し掛かると、一匹の鹿が現れました。

左衛門四朗は狙いを定めて矢を放ちます。矢は急所を外れて太ももに当たり、急いで鹿を追いかけますが、その時には日も暮れかけ、鹿を取り逃がしてしまいます。

その4日後、左衛門四朗はその場所に戻り、雪に染まっている鹿の血を追っていくと大きな坂の下に鹿が倒れていました。人の気配を感じた鹿は、負傷したとは思えない勢いで、山奥目指し、一目散に逃げていきました。左衛門四朗は鹿を目がけ、2度矢を放ちますが、鹿の姿はかき消すように見えなくなり、捕えることはできませんでした。

そしてふと、あの鹿はあれほどの傷を受けて、どう癒したのかと不思議に思い、鹿の倒れていた所まで戻ってみると、雪の深い山奥に一坪ばかり雪のない所があります。そこからは香りの強い湯が沸いています。あの鹿は3日間この湯に浸かって深手の傷を癒していたものと理解し、左衛門四朗もそこへ入ってみます。その湯は大変気持ち良く、今までの疲労も病気も一気に癒えた気がしたそうです。

村に戻り、早速このことを人々に伝えると、たちまち評判の湯となり、湯治をする人が増えたそうです。左衛門四朗は小屋を作って湯治場とし、人々はそこを鹿湯と呼び利用しました。

現在は、酸ヶ湯(すかゆ)と呼ばれる観光地になっています。これは、シとスの発音の間違いから酸性の湯と勘違いされ、酸ヶ湯、と改名されたそうです。

その後左衛門四朗は、祠を造営し、この鹿を祀ります。これが現在の酸ヶ湯の薬師神社であるといわれています。
 
(芳賀)