コラム第4話 樹齢千年の甕杉

  • 2013.06.04 Tuesday
  • 10:35

 鎌倉幕府の滅亡につながったといわれる安東氏の内乱。1318年頃から起こったとされる、安東季長(あんどう すえなが)と安東季久(あんどう すえひさ)の内紛です。この紛争を鎌倉幕府が抑えることが出来なかったため、幕府の求心力が弱まり滅亡へと向かったといわれています。

 この戦いの当事者である安東季長の城があったとされる深浦町の北金ケ沢へ取材にいってきました。その城跡は海沿いの町から一段あがった高台にあります。まず驚いたのは、情報伝達やや交通手段が発達していない時代に青森県でも辺境であるこの地域の争乱が鎌倉政権に影響を与えたという距離感の不思議でした。
 そして、そこには青森県の天然記念物に指定されている甕杉という巨木がたっていました。樹齢は千年とされています。高台にある小さな敷地。そこにいったいどのような形の城が築かれ、どのような出で立ちの人たちが住んでいたのか。そしてどのような会話をしていたのか。私は想像をめぐらせてみましたが頭の中に鮮明な映像をうかべることはできませんでした。調べてみてもこの時代の青森県に関する史料は絵図など残されていないため、具体的なビジュアルとして想像できないのです。
 
しかし、樹齢千年の甕杉は今からおよそ700年前の出来事である安東氏の内乱をリアルタイムで見ていることになります。安東季長とその配下の武将たちがこの杉の下で交わしたであろう会話も聞こえていたことでしょう。そのような思いを巡らしながらこの杉を改めて見上げると何か特別な感慨を感じてきます。
 千年といえば私たち人間にとっては永遠と思えるほどの長い時間ですが、この甕杉もいつかは、寿命がつき朽ち果てるときがやってきます。私が生きているこの時代に甕杉に触れることができたことはとても幸運なことなのだと思いました。

出典:青森県史 資料編 中世
 

                                     

(金さん)